関西支部の劇評紙「act」

編集・発行/国際演劇評論家協会(AICT)日本センター関西支部
編集長/中西理
編集人/古後奈緒子・正木喜勝
デザイン/松本久木(MATSUMOTOKOBO Ltd.)
[2012年1月31日現在]

「act」リニューアルのことば

8月発刊の20号から、AICT国際演劇評論家協会日本センター 関西支部長を務める私(中西理)が編集長となり、新体制で同センター 関西支部の演劇批評誌「act」をリニューアルすることになりました。
リニューアルにともないエディトリアルデザインを気鋭のデザイナー、松本久木氏が担当、シンプルでシャープなものに一新しました。さらに今回この公式ウェブサイトも立ち上げ、紙媒体に収録しきれなかった部分も完全掲載、フリーペーパーとネットの両輪により展開していきます。
AICT日本センター関西支部の会員による劇評誌であることはこれまで通りなのですが、いままで以上に新たな若い書き手の発掘・育成を手掛けていきたいと考えています。
東京ではポストゼロ年代ともいわれる2010年以降、ままごとの柴幸男、柿喰う客の中屋敷法仁ら若手の演劇人の台頭など新たな動きが目立ち、そうしたビビッドな動きを批評する新たな書き手も現れ、演劇を巡る言論の場が大きく変容しつつあります。
関西でも同様の動きが作り手のなかから現れているのに対し、それを批評する書き手はまだまだ不足しており、批評の場は立ち遅れているのが実情です。ネット媒体なども発達した現在、「書く気があればどこにでも書けるの」も確かですが、特に若いうちは「活動の場」も大切で、その一翼をこの新生「act」が担えればと考えています。
[2011年8月1日]

中西理(AICT国際演劇評論家協会日本センター 関西支部長)

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act(あくと)創刊のことば

劇評家で作る組織AICT(国際演劇評論家協会)日本センター関西支部で劇評誌を発行することになった。関西支部のメンバーは現在十三名だが、みんな無類の芝居好き。関西の演劇・パフォーマンス、舞踏などの上演状況を広く、細かに紹介することで、劇場に足を運ぶ人の数が増えればこれに勝る喜びはない。
雑誌のタイトルは『act』(あくと)とした。あくとは劇やオペラの「幕」、寄席やショーの「出し物」といった意味だが、広く舞台上の演技や芝居そのものを表す言葉でもある。もちろん「行為」「行動」が原義なのだが、演劇を鑑賞し、評論するという発信行為をこの雑誌を通して続けていきたい。actはまた私たちの組織「アソシエーション・オブ・シアター・クリティク」の略称でもある。
レパートリーに入った10数本の作品をシーズンを通して日替わりで上演するヨーロッパでは、劇評を見て観劇する人も多い。おのずと劇評家にも高い地位が与えられる。芝居の初日は観客席に劇評家や文化人がずらりと並ぶ緊張の日だ。劇評家は独自の演劇観、独自の文体で評論を展開し、一つの文学・読み物としても読ませる。劇評集を出版し、時代を越えて読まれる劇評家も少なくない。
黄金の20年代と呼ばれるワイマール共和国の時代、ベルリンは世界演劇の首都であった。演出家のラインハルトとイェスナーのみならず、劇評の世界でも大御所アルフレート・ケル(ベルリン日刊新聞)と若手ヘルベルト・イェーリング(ベルリン株式速報新聞)が火花を散らしていた。初日の幕がはねると、近くのカフェや飲み屋で夜を明かし、朝の6時ごろに配られる新聞の劇評をむさぼるように読んだ人も多いという。
日本では劇評が出たころには芝居が終わっていることが多い。劇評が一種の文化現象になるような時代は遠い先のことかもしれない。だが少なくとも多くの人を劇場にいざなうような劇評誌を、皆さんに届けたいと思う。もちろん私たちが目指すのは創造者と真摯に向き合い、互いに刺激し、高めあう創造的なコラボレーションである。歩み始めたばかりのactを、リニューアルした全国誌シアターアーツともども暖かく見守ってほしい。
[2004年5月31日]

市川明(AICT日本センター関西支部長。大阪外国語大学教授)[編集注:肩書きは2004年当時]