国際演劇評論家協会日本センター のすべての投稿

第27回シアターアーツ賞結果発表

先日、第27回シアターアーツ賞の選考会が行われ、以下の通り、今年度の受賞作が決定しましたのでご報告申し上げます。

【大賞】佐藤未来羽「白井晃演出『アルトゥロ・ウイの興隆』―「熱狂」と「距離」をめぐって―」

【佳作】高嶋慈「プッチーニ『蝶々夫人』の批評的解体と、〈声〉の主体の回復 ―ノイマルクト劇場& 市原佐都子/Q『Madama Butterfly』」

第27回シアターアーツ賞結果発表

受賞作と選評は『シアターアーツ』第67号に掲載予定です。

AICT関西支部演劇講座①「創作現場の多様性を巡って―ピンク地底人3号と山本かれんの視点」

「創作現場の多様性を巡って―ピンク地底人3号と山本かれんの視点」

舞台芸術の創作現場では多様性を生む様々な試みがあり、そこには様々な困難や気づきがあるはずですが、その様子は観客にはわかりません。今回の演劇講座では 10 月にKAVC で手話裁判劇『テロ』(作:フェルナンド・シーラッハ)を演出したばかりのピンク地底人3号さんを講師にお呼びします。様々な人が集う稽古場だからこそできたこと、それゆえに難しかったこと、など、具体的な例をお伺いします。対談相手は大学の技官として学生の創作現場に携わると同時に、舞台や映像を作る京都発のディレクションチームnidone.worksで美術、小道具を担当する山本かれんさん。大学ではどう多様性に取り組むことができるだろうか、というあたりを軸に話を広げていく予定です。ゆるっとした座談会形式をとりますので、みなさまぜひご参加ください。

 

日時:2022 年 10 月 23 日(日)16時 00分~17時30分(受付開始・開場:15時45分)

料金:無料(カンパ箱設置)

会場:Social Kitchen 2 階(〒602-0898 京都市上京区相国寺門前町699 Social Kitchen)

※アクセスは会場の公式サイト参照(http://hanareproject.net/access_contact/

※1階はCaféです。営業していれば、お茶もできます。11時半~16時(LO:15時半)

講師:ピンク地底人3号(ももちの世界)山本かれん(nidone. works)

司会:岡田蕗子(国際演劇評論家協会(AICT/IATC)関西支部会員)

予約・問合せ:aict.act2020☆gmail.com(岡田)※「☆」を「@」に変えてご送信ください。

※予約優先。予約時は、お名前、人数、ご連絡先(メール・電話番号等)をお知らせください。

※ご来場時は感染対策にご協力ください。※体調が悪い場合はご来場をお控えください。

主催:国際演劇評論家協会(AICT/IATC)関西支部

【講師紹介】

ピンク地底人3号(ももちの世界) 

劇作家/演出家 同志社大学文学部文化学科美学芸術学卒業。2006年からピンク地底人の長男兼リーダーとして活動を開始。元納棺師という異色の経歴を持つ。生者と死者の境界を曖昧にしながら、人間や社会の暗部を容赦なく描く作劇が特徴。近年は手話を使った作品を立て続けに発表し、新たな挑戦も始めている。代表作に2018年『わたしのヒーロー』(第6回せんだい短編戯曲賞大賞受賞)、2019年『鎖骨に天使が眠っている』(第24回劇作家協会新人戯曲賞受賞)、2020年『カンザキ』(第27回OMS戯曲賞佳作受賞)、2021年『華指1832』(第66回岸田國士戯曲賞最終候補)等がある。

山本かれん(nidone. works)

1996年生まれ、大阪府出身。京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)の舞台芸術学科を卒業。主に舞台美術を学びながら在学中よりnidone.worksとして活動。現在は同大学の職員を務めながらnidone.worksの活動や個人で美術、小道具製作、イラストなどの仕事を請け負う。遊び心や小ボケを作品に取り込みながら、大人も子どももクスッと笑えて温かくなれるようなモノづくりを心がけている。

AICT-IATCロシアセンターからウクライナセンターへのメッセージ

AICT-IATCの事務局長ミシェル・ヴァイス氏経由で各国センターに転送されてきましたAICT-IATCロシアセンターからウクライナセンターへのメッセージの日本語訳を、急ぎ日本センターの会員諸氏とも共有いたしたく、英語とフランス語の原文とともに、以下に掲載させていただきます。
2022年2月25日 国際演劇評論家協会日本センター事務局

*********************

AICT-IATCウクライナセンター宛

AICT-IATCロシアセンターより

ロシア軍によるウクライナ侵攻について

同志へ

私たちは自国の政府によってウクライナの人々に行われている唾棄すべき軍事行動を非難し、この戦争への反対を明らかにするための署名をはじめ、あらゆる手段を用いて抗議を表明する所存です。
私たちは恥と無力感に苛まれていますが、皆さまの安全をお祈りしています。
そして私たちの願いは、演劇こそが常に人間らしさを支える空間であり続けること。

国際演劇評論家協会の使命の一つは、世界中どこでも表現の自由が促されること、文化の違いに橋を架けること、そして何時であろうと自由が束縛されるときには、それを守ることです。
私たち国際演劇評論家協会はロシア政府に対して、自国内における自由で平和的な手段に則った異議の表明を許し、他の独立国の境界を尊重することを要求します。
表現の自由こそ、いまや世界中の自由を愛する人々にとっての結束の絆です。
私たちはロシア政府に対し、現在の暴力を即座に停止し、侵略行動からの退却を強く求めます。

**************************

TO: Ukraine National Section, International Association of Theatre Critics (AICT-IATC)

FROM: Russia National Section, International Association of Theatre Critics (AICT-IATC)

RE: Russian Military Invasion of Ukraine

“Dear colleagues and friends!

We are horrified and condemn the military aggression that is launched against Ukrainian people by this government. We express our protest by all available means – manifesting and signing petitions against the war. We feel shame and helplessness. Be safe! Let theatre always stay a space for humanity.”

One of the primary missions of the International Association of Theatre Critics is to promote global free expression, the building of bridges between cultures, and the advocacy of freedom whenever it is constrained. The IATC calls upon the Russian government to allow the free and peaceful expression of dissent within its border and to respect the borders of independent nations.

Free expression is now a rallying point for freedom-loving people throughout the globe. We strongly urge the Russian government to cease and desist from its current path of oppression.

* * * * *

À : La Section nationale ukrainienne de l’Association internationale des critiques de théâtre (AICT)

DE : La Section nationale russe de l’Association internationale des critiques de théâtre (AICT)

OBJET : Invasion militaire russe de l’Ukraine

Le président et le secrétariat général de l’Association internationale des critiques de théâtre (AICT) ont reçu aujourd’hui un message de nos collègues de la section russe de l’AICT, destiné à nos collègues de la section ukrainienne. Nous diffusons ce message par tous les canaux disponibles.

« Chers collègues et amis !

Nous sommes horrifiés et condamnons l’agression militaire lancée contre le peuple ukrainien par ce gouvernement. Nous exprimons notre protestation par tous les moyens disponibles – en manifestant et en signant des pétitions contre la guerre. Nous ressentons de la honte et de l’impuissance. Prenez garde ! Que le théâtre demeure toujours un espace pour l’humanité. »

L’une des principales missions de l’Association internationale des critiques de théâtre consiste à promouvoir la liberté d’expression dans le monde, la construction de ponts entre les cultures et la défense de la liberté chaque fois qu’elle est contrainte. L’AICT appelle le gouvernement russe à permettre l’expression libre et pacifique de la dissidence à l’intérieur de ses frontières et à respecter les frontières des nations indépendantes. La liberté d’expression est désormais un point de ralliement pour les personnes éprises de liberté à travers le monde. Nous demandons instamment au gouvernement russe de cesser et d’abandonner sa trajectoire actuelle vers l’oppression.

伊丹市議会宛に「伊丹市立演劇ホール(アイホール)の存続を希望する陳情」提出

本日、伊丹市議会宛に国際演劇評論家協会(AICT)日本センターの「伊丹市立演劇ホール(アイホール)の存続を希望する陳情」を提出しました。存続希望の声が途切れないことを示すため、今日提出です。瀬戸宏関西支部長と岡田蕗子関西支部会計の二人が持参しましたが、陳情書は日本センターとしての提出です。

【シアター・クリティック・ナウ2021のご案内】

《国際演劇評論家協会[AICT]演劇評論賞 受賞記念シンポジウム》

佐藤信と「運動」の演劇

演劇・ダンスの優れた批評を顕揚する第26回AICT演劇評論賞に、梅山いつき著『佐藤信と「運動」の演劇 黒テントとともに歩んだ50年』(作品社)が選ばれました。これを記念し、受賞者である梅山いつき氏、さらにゲストに佐藤信氏、内田洋一氏をお迎えして、「佐藤信と『運動』の演劇」について語っていただきます。

 

【パネリスト】

梅山いつき(演劇研究者、近畿大学准教授)

佐藤 信  (演出家、劇作家、座・高円寺芸術監督、若葉町ウォーフ代表理事)

内田 洋一 (司会/演劇評論家、新聞記者)

 

【日時】 2021年7月25日(日)18:00~20:00(予定)

*17:30~ 第26回AICT演劇評論賞および第25回シアターアーツ賞 授賞式

【会場】 座・高円寺(2F)カフェ アンリ・ファーブル

(〒166-0002杉並区高円寺北2-1-2)

【参加費】 一般 500円 AICT会員・学生=無料

【予約・問い合わせ】 aictjapan●gmail.com

*●を@にかえてください。

 

*予約優先(氏名・連絡先をお知らせください)

*当日は、感染症予防対策にご協力ください。

*今後の状況によって開催を変更する可能性がございます。

その際には国際演劇評論家協会[AICT]日本センターのホームページにてお知らせいたしますので、事前のご確認をお願い申し上げます。

 

主催:国際演劇評論家協会[AICT]日本センター http://aict-iatc.jp

協力:NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺

劇カフェ2021のお知らせ

AICT 会員の方々を招き、専門的かつ分かりやすいトーク&レクチャーを繰り広げる「劇カフェ」を再開します。今回は演劇表象におけるジェンダーについてみなさまと一緒に考えたいと思います。刺激的な一夜を座・高円寺でともに過ごしましょう。

―――――――――――――――

【演劇とジェンダー】

トーク=柴田隆子(舞台芸術研究・AICT会員)

聞き手=小田 幸子(能・狂言研究家・AICT事務局長)

日時:2021年6月14日(月)18:00〜20:00(予定)

会場:座・高円寺 けいこ場2(地下3階)

会費:無料

要予約:(感染症対策のため、20名に人数を限って開催します)

問い合わせ・予約先:aictjapan●gmail.com

*●を@に変えてください。

※後日映像配信も予定しております。

―――――――――――――――

「ジェンダー」は、元々はカルチュラル・スタディーズ研究からでてきた表象を扱う概念です。ただ、これが「身体」と関わるので厄介な問題となります。表象として「ジェンダー」を考えた場合、「キャラクター(=登場人物)」で考え、そこでの色々な付与された差異をどう配置するのかを、ごく愚直に「抽象」や「基本形」から出発して考えたのが、私が専門とするバウハウスで舞台芸術を教えたオスカー・シュレンマーの理論です。最初に舞台上の身体に関する彼の理論をお話しさせていただき、そこから演劇における「ジェンダー」を会員のみなさまと一緒にお話しできたら嬉しいです。(柴田)

 

主催・連絡先=国際演劇評論家協会(AICT)日本センター

協力=NPO 法人劇場創造ネットワーク / 座・高円寺

第8回タリア賞受賞記念シンポジウム「鈴木忠志をめぐって」

第8回タリア賞受賞記念シンポジウム「鈴木忠志をめぐって」

 

この度、国際演劇評論家協会[AICT]が主催する、第8回タリア賞に鈴木忠志氏が決定いたしました。つきましては、授賞式および記念のシンポジウムをオンラインにて開催いたします。

 

本来は、2020年にスロバキアのブラチスラバでの授賞式を予定しておりましたが、感染症の影響により延期となり、今回のオンラインでの授賞式の運びとなりました。

 

今回のシンポジウムには世界各地から、演劇批評家・演劇研究者が参加します。

 

身体活動がいやおうなく制限される現在、究極的な演劇的身体を生み出す鈴木演劇からますます目が離せません。鈴木忠志氏の長年の活動が、世界の演劇に与え続けている多大な影響について、各国からの視点で語られる貴重な機会です。ぜひご参加ください。

 

=====================

[日時] 2021年4月16日(金) 21時~

[リンク] AICTのWebマガジン「クリティカル・ステージ」のフェイスブックの

以下のリンクからご参加ください。

https://www.facebook.com/Critical-StagesSc%C3%A8nes-Critiques-The-IATC-journalRevue-de-iAICT-810215429163573

※ 事前登録は不要です。

※ プログラムの詳細は、以下をご覧ください。

※使用言語は英語です。

=====================

 

タリア賞は、国際演劇評論家協会[AICT]が、その活動において舞台芸術・演劇批評に大きな影響を与えた人物を顕彰するために創設された賞です。隔年ごとに開催され、これまで、エリック・ベントレー氏(アメリカ)、ジャン=ピエール・サラザック氏(フランス)、リチャード・シェックナー氏(アメリカ)、カピラ・ヴァチャヤン氏(インド)、ユージェニオ・バルバ氏(デンマーク)、フェミ・オソフィサン氏(ナイジェリア)、ハンス・ティース・レーマン氏(ドイツ)が受賞されています。

 

受賞者には、ギリシャ神話のタレイアの顔がついた銀の杖が贈呈されます。本年は、ルーマニアの舞台美術家ドラゴシュ・ブハジアール氏が作成による、ルーマニアの批評家たちからの贈呈品となっております。

 

%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%

【シンポジウム・プログラム】(敬称略)

■タリア賞授賞式 (30分)

[開会の辞]マルガレータ・ソレンソン(スウェーデン/国際演劇評論家協会[AICT]会長)

[挨拶]穴澤万里子(日本/国際演劇評論家協会[AICT]理事)

[祝辞]アン・ホガート(アメリカ)  「鈴木忠志を讃えて」

 

[受賞者挨拶] 鈴木 忠志

 

■第1パネル (60分) ――理論と文化を横断する対話

・[司会]サヴァス・パッサリティス (ギリシャ)

・アリソン・フィンドレー (イギリス) 「技能と精神」

・リ・シュウレ(中国) 「鈴木忠志著 『文化は身体だ』における演劇理論の現代的意味」

・ペネロペ・チャジディミトリオウ (ギリシャ)

「鈴木忠志――ギリシャ古典の再創造する、戦後日本のアイデンティティの再創造する」

・内野 儀(日本) 「脱植民地性について――日本における鈴木忠志」

〈討論〉

 

■【映像】鈴木忠志の仕事(15 min) (映像制作=SCOT)

 

■第2パネル(60分)――実践と文化を横断する対話

・[司会]ディーパ・パンジャニ (インド)

・アナ・ウルフ(アルゼンチン) 「いかに技芸の核心に近づき、離れるか?」

・ディアナ・ミロシェビッチ (セルビア) 「演劇テクニックの力」

・アクシャイ・ガンディー (インド) 「鈴木メソッドの身体訓練によって

インドの都市風景における“Working-in-Theatre”の文化を発見する」

・オクタヴィアン・サイウ (ルーマニア/ニュージーランド)

「場の感覚――鈴木忠志、利賀、演劇の本質」

〈討論〉

 

■閉会の辞 (15 min)

・イヴァン・メデニカ (セルビア/国際演劇評論家協会・シンポジウム実行委員長)

%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%

 

【クリティカル・ステージ・ホームページ】 https://www.critical-stages.org/

 

【国際演劇評論家協会[AICT]ウェブサイト】

*ホームページ

AICT-IATC | International Association of Theatre Critics (aict-iatc.org)

*プログラム詳細

Tadashi Suzuki, Thalia Prize and IATC Conference (aict-iatc.org)

*鈴木忠志氏・タリア賞受賞

The 2020 Thalia Prize: Tadashi Suzuk

「政府による「日本学術会議」人事について経緯を明らかにすることを求める声明」に賛同

国際演劇評論家協会日本センターは、10月12日付で日本劇作家協会ほかの「政府による「日本学術会議」人事について経緯を明らかにすることを求める声明」に賛同しました。

声明の全文は下記の通りです。

政府による「日本学術会議」人事について経緯を明らかにすることを求める声明

政府から独立した立場で政策提言をする科学者の代表機関「日本学術会議」が新会員として推薦した候補者105人のうち、6人を菅義偉首相が任命しませんでした。

独立性が保たれるべき学術会議の人事に、もしも不当な介入があったとすれば、憲法が保障する「学問の自由」の侵害となります。
今回の案件が、将来的に、学術や芸術への政府の過度の干渉の引き金となり、また表現・言論の自由への侵害へと発展していくことを私たちは危惧します。

私たちは、今回の政府による「日本学術会議」への人事について、決定の経緯を明らかにすることを求めます。

2020年10月6日
一般社団法人 日本劇作家協会

※演劇団体や芸術文化団体にもこのアピールへの賛同を広く呼びかけています。

日本センター声明

皆さん、「新型コロナウイルス」を記録しませんか
山本健一(国際演劇評論家協会日本センター会長)

新型コロナウイルスの猛威と、政府の無理解な文化政策により、人の命、演劇の命が脅かされています。演劇が街から消え、人が人に近づけないまま出口もわかりません。今、私たち国際演劇評論家協会日本センター会員は何をなすべきなのか。危機が時代の、物事の本質をあぶりだすといいます。我々の眼と心を通してこの悲惨な事態を見つめ、真実と向き合うために言葉で報告、批評する。忘れないために、後の人が検証できるように記録する、多様なものの見方、論理を展開する。つまり未来への準備をすることだと思います。新型コロナウイルスが瞬く間に世界で蔓延したように、変化はとてつもなく速い。我ながらどんどん忘れていくのが恐ろしい。事態はどう推移しているのか。演劇界はどう反応し、対応したか。各人がそれぞれの媒体で発表することはもちろん大切ですが、国際演劇評論家協会日本センターの発表媒体であるWeb版シアターアーツでそれぞれの思いを共有しませんか。

会員の皆さんに投稿していただきたいのは例えばこんなことです。まず全国からの演劇現場のきめ細かな報告です。演劇人も劇場も存続の危機に立っている事実を共有したいと思います。物心両面から挟撃され、演劇人はどう思い、悩み、決断したのか。自分たちの劇場や公演が集団感染の原因になったら、全国の劇場と演劇人に取り返しのつかない迷惑をかけるという不安、恐怖、倫理感に責めさいなまれていると思います。こんな非日常のことが当たり前のように起きている現状は、今こそ記録すべきだと思います。

以前芸能人の経済状況をまとめた「芸能人白書」を読み、経済的な窮状の中で演劇人がいかに生活し、演劇への志を絶やすまいとしているかに粛然とした記憶があります。小さな劇団、集団こそ日本の演劇創造の中核であることを私たちは知っています。そのフリーの演劇人たちが無収入に近い残酷な現実を、私たちは直視したいと思います。

ご存知のように国の姿勢には様々な問題が浮かび上がっています。補償はしないが自粛しろとは、言葉もありません。結果として特別措置法により演劇表現が困難になれば、憲法で保障された基本的人権である表現の自由が脅かされてしまうことになります。諸外国の法制度や文化行政は今、どのように機能しているのでしょうか。外国演劇を専攻する会員の現場報告や知見もしりたいところです。

演劇を脅かすものは国家だけではなく演劇を見て支える市民自身でもあります。今どき芝居をしている場合かと脅しに近い同調圧力という集団心理が、分断の萌芽が街中にあります。演劇を支える者が演劇を否定する矛盾を、現在の危機は巻き起こしました。これまで国家の強権に翻弄され従ってきた、危機の時代にはしばしば現れてきたこの国民性の発現を、改めて今どう考えたらいいのでしょうか。

しかし変化という新しい局面もかすかに見えています。御存知のように外出規制によりインターネットやSNSという仮想空間が存在意義を強め、テレワーク、ネット授業などの変化が暮らしに現れています。演劇現場ではオンラインやZoomを利用した演劇などバーチャル演劇への模索もあります。私達はギリシャ古典劇以来、人と人とが直接に濃厚交感するのが演劇と思ってきました。私は時代が変わってもその本質は変わらないと思いますが、演劇とは何なのかという本質的な問いかけを含む動きのようにも見えます。ライブ本来の演劇のよさを再認識させるのか、あるいは舞台と観客のつながり方に新しい認識をよぶのか。バーチャル演劇にはどんな現場があり、担い手たちはどう考えて試みているのでしょうか。「新型コロナウイルス後」に加速される人工知能など技術革新を柱とした新たな産業革命の中で、バーチャル演劇はどんな位置を占めていくのでしょうか。

もう一つ知りたいのは過去・歴史との参照です。人には感染病との闘いの歴史があります。交易により大流行したペストで世界は中世から近代資本主義社会へパラダイム変化し、ルネッサンスの萌芽という文芸・文化・精神面でも局面がかわったことは知られています。後日様々な果実を文化・芸術にもたらしました。またスペイン風邪の流行は日本でも演劇界を襲いました。過去の世界的な疫病流行が文化芸術表現にもたらした影響を考えることで、今の新型コロナウイルス蔓延が演劇に及ぼしている内実を考えるヒントはないのでしょうか。

英国を代表する演劇制作者のキャメロン・マッキントッシュは最近のラジオ番組で「ロンドン・ウエストエンドやニューヨーク・ブロードウェイの劇場が、来年初めまでに公演を行える可能性は低い」と語りました。私達にはこのような将来を予測することは出来ません。しかし会員の心と力を集めれば現在を記録し、やがて歴史化するであろう未来へのお手伝いは出来ると思います。それが今、危機にある演劇人に力と勇気を与えると信じたい。皆様の投稿をお待ちしています。
2020年5月10日