舘野太朗 のすべての投稿

思考の種まき講座《15》

国際演劇評論家協会(AICT)日本センターでは、毎月、座・高円寺で演劇講座を開催しております。12月は安達紀子さんにロシア演劇についてお話をうかがいます。


「激動の時代を歩んできたロシア演劇」
 講師:安達紀子


ロシアにおいて、演劇は演劇以上の意味を持ち、演劇以上の役割を果たしてきた、と言っても過言ではありません。いまコロナのパンデミックとウクライナ侵攻が続くなか、ロシアの演劇界では何が起こり、演劇人たちはどのような反応を示しているのか、激動の時代を歩んできたロシア演劇の足跡をたどりながら、現在のロシア演劇の傾向、その動向について考察してみたいと思います。


[日時]2022年12月25日(日) 16:00~18:00
[会場]座・高円寺 けいこ場(地下3階)
[参加費]一般=500円(会員・学生=無料)※当日清算
[予約フォーム]https://forms.gle/8cjDLMjKdGZ4GfFR8
※予約優先。「予約フォーム」または、下記「問合せ」メールアドレスからご予約ください。(メールの場合、件名に「思考の種まき講座・12月」とご記入の上、お名前・人数・日中のご連絡先TELを明記してください。)
[問合せ]aictjapan@gmail.com
[主催]NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺
[協力]国際演劇評論家協会日本センター http://aict-iatc.jp/


講師プロフィール
安達紀子(あだち・のりこ)
早稲田大学大学院博士後期課程ロシア文学科を修了。朝日新聞モスクワ支局の通訳を経て現在、早稲田大学、慶応義塾大学の非常勤講師。著書に『モスクワ狂詩曲』、『モスクワ綺想曲』(小野梓記念芸術賞)、『ロシア 春のソナタ、秋のワルツ』など。訳書にスタニスラフスキーの『俳優の仕事』(共訳、日本翻訳出版文化賞)、チェーホフの『三人姉妹』『桜の園』、ゴーリキーの『どん底』など。1999年ロシア文化省よりプーシキン記念メダルを授与される。

思考の種まき講座《14》

国際演劇評論家協会(AICT)日本センターでは、毎月、座・高円寺で演劇講座を開催しております。11月の思考種まき講座は、「ディケンズとヴィクトリア朝のクリスマス」と題し、『魅惑のヴィクトリア朝――アリスとホームズの英国文化』などの著書がある、英文学・比較文学者の新井潤美さんに、『クリスマス・キャロル』を中心にディケンズとヴィクトリア朝のクリスマスについて語っていただきます。

「ディケンズとヴィクトリア朝のクリスマス」
講師:新井潤美(あらい・めぐみ)

チャールズ・ディケンズの「クリスマス・キャロル」は最初に発表された頃から絶大な人気を博し、今でもイギリスやアメリカのクリスマスには何らかの形で舞台やテレビに登場する。ディケンズはクリスマスというイベントを「発明」したとまで言われることもあるほどだ。ディケンズとヴィクトリア朝のクリスマスに目を向けることによって、ヴィクトリア朝の社会や文化のありを見ていきたい。

[日時]2022年11月23日(水・祝) 16:00~18:00
[会場]座・高円寺けいこ場(地下3階)
[参加費]500円(AICT会員・学生:無料)
[予約フォーム]https://forms.gle/TdMfSq48tHwKEH8R8
※ 予約優先。「予約フォーム」または、下記「問合せ」メールアドレスからご予約ください。(メールの場合、件名に「思考種まき講座・11月」とご記入の上、お名前・人数・日中のご連絡先TELを明記してください。)
[問合せ]aictjapan@gmail.com
[主催]NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺
[協力]国際演劇評論家協会日本センター

講師プロフィール
新井潤美(あらい・めぐみ)
東京都生まれ。英文学、比較文学者。東京大学大学院人文社会系研究科教授。著書に『魅惑のヴィクトリア朝――アリスとホームズの英国文化』(NHK出版)、『「英国紳士」の生態学 : ことばから暮らしまで』(講談社)、『ノブレス・オブリージュ : イギリスの上流階級』(白水社)、『英語の階級――執事は「上流の英語」を話すのか?』(講談社)などがある。

思考の種まき講座《13》

※(10月17日追記)予約フォームを追加しました。

国際演劇評論家協会(AICT)日本センターでは、毎月、座・高円寺で演劇講座を開催しております。10月の「思考の種まき講座」は、菅孝行さん、松井憲太郎さんと「日本の公共劇場」について考えます。

日本の公共劇場を考える

講師=菅 孝行・松井憲太郎

[日時]2022年10月30日(日) 16:00~18:00
[会場]座・高円寺 けいこ場(地下3階)
[参加費]一般=500円(会員・学生=無料) *当日清算
[予約フォーム]https://forms.gle/7sStDPRvQGDq569JA
*予約優先。「予約フォーム」または、下記「問合せ」メールアドレスからご予約ください。
(メールの場合、件名に「思考の種まき講座・10月」とご記入の上、お名前・人数・日中のご連絡先TELを明記してください。)*当日は、感染症予防対策にご協力ください。内容等変更がある場合は、AICTのホームページでお知らせしますので、ご確認をお願いいたします。
[主催]国際演劇評論家協会(AICT)日本センター
[協力]NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【報告の趣旨】
傑出した舞台が興行的に成功することは稀である。それゆえ、興行の成果では測れない芸術価値のための公共劇場の設立や人材育成が、政府・自治体の政策課題とされなければならない。しかし、この国の公共劇場や人材育成制度の内実はまだ極めて貧しい。
そこには、後進国として出発した近代日本が、偏狭で功利主義的な「文明」を重視し、近代芸術はむしろ権力と対抗的に形成発展を遂げるしかなかったという事情が反映している。特に戦前の新劇運動は反権力的な性格ゆえに弾圧の対象となった。その傾向が敗戦後も形を変えて継承され、ある時期まで演劇人の多くは公共劇場、事業・人材・集団などの育成を国家・自治体に要求する権利の重要性を自覚できなかった。そして、制度政策策定の機運が生まれた八〇年代以降、演劇人は、その機運に、自らの主張と要求を反映させる規定力を発揮できず、政府や自治体に受け身で保護や助成を求めることに奔走してきた。芸術文化振興基本法、劇場法(劇場・音楽堂等の活性化に関する法律)などの法整備が進んでも、公共劇場や助成制度の実態はむしろ後退しているように見受けられる。
そこで、新国立劇場の成立過程で顕在化した問題を中心に、①公共劇場とは何か、②芸術監督の役割、③公立劇場になぜ劇団・養成機関が付設されなければならないか、④そうした指標に照らして、現状をどう認識すべきか、⑤近未来への展望などについて報告し、今後の議論の素材の一つとしたいと思う。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【講師プロフィール】
◎菅 孝行(かん・たかゆき)

1939年生まれ、劇作家・評論家。戯曲集に『ヴァカンス/ブルースをうたえ』『いえろうあんちごうね』。戯曲『はんらん狂騒曲』、劇映画シナリオ『北村透谷 わが冬の歌』。演劇関係の著作に『解体する演劇(正・続)』『戦後演劇』『想像力の社会史』「資料 新国立劇場 上・下」(『演劇人』1号/『演劇人』3号)『戦う演劇人』『佐野碩 人と仕事(編著)』『演劇で世界を変える 鈴木忠志論』など。

◎松井憲太郎(まつい・けんたろう)

演劇制作・評論。1981~96年、劇団黒テントに在籍。90年より世田谷文化生活情報センターの世田谷パブリックシアター部門の計画づくりに関わる。同劇場が開場した97年から2007年度までプログラム・ディレクターなどを務め、公演や学芸事業を統括した。2010年から21年度まで、富士見市民文化会館キラリふじみの館長を務めた。 世田谷パブリックシアター以来、東南アジアを中心に海外と日本の演劇人・舞踊家のコラボレーション作品を数多く制作した。

第27回シアターアーツ賞原稿募集

国際演劇評論家協会(AICT)日本センターは、演劇批評に新しい地平を拓く気鋭のために「シアターアーツ賞」を設け、新進による未発表の演劇・ダンス評論応募作より特に優秀と認められる作品を顕彰しています。

第27回シアターアーツ賞の原稿を募集しております。年齢や経歴などの応募資格は特に定めておりません。舞台芸術を批評の対象とした未発表の原稿をお送りください。受賞作品は『シアターアーツ』67号(2023年春)に掲載され、大賞受賞者には賞金5 万円が贈られます。奮ってご応募ください。

第27回シアターアーツ賞

  • 対象=舞台芸術(演劇・ダンス・オペラ・ミュージカル等)についての批評、論文。期日までに本誌に投稿された論文も含む。ただし、未発表のものに限る。
  • 書式= 16,000 字以内。原稿はA4 横書きのWord ファイル、もしくはpdfファイルを以下の宛先まで添付にて送信してください。その際、別紙に氏名・住所・年齢・電話番号・職業(所属)・メールアドレスと略歴を記すこと。原稿本文中には筆者の名前を記さないこと。
  • 宛先 aict.ta.prize@gmail.com
  • 締切 2023 年1 月10 日23 時59 分まで。

【付記】選考に関するお問い合わせには、一切応じられません。
当選作の初出掲載権は、AICT(国際演劇評論家協会)日本センターに属するものとします。

過去の受賞作はこちらのページをご覧ください。

思考の種まき講座《12》

国際演劇評論家協会(AICT)日本センターでは、毎月、座・高円寺を会場として演劇講座を開催しております。2022年9月は瀬戸山美咲さんをお迎えして、演劇界のジェンダーギャップについて皆さんと考えます。

※ 申込フォームを追加いたしました。(2022/9/5)

思考の種まき講座《12》演劇フォーラム
瀬戸山美咲さんと考える――演劇界のジェンダーギャップ
(聞き手=濱田元子さん、飯塚友子さん)

[日時]2022年9月18日(日) 17:00~19:00
[会場]座・高円寺 けいこ場(地下3階)
[参加費]一般=500円(会員・学生=無料) *当日清算
[問合せ]AICT事務局(aictjapan@gmail.com)
[予約]AICT事務局(aictjapan@gmail.com)にお名前・人数・連絡先をお知らせいただくか、申込フォームからご予約ください。※本講座は予約優先となります。

*当日は、感染症予防対策にご協力ください。内容等変更がある場合は、AICTのホームページでお知らせしますので、ご確認をお願いいたします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

146カ国中116位、主要7カ国(G7)で最下位――。

世界経済フォーラム(WEF)が7月に発表したジェンダーギャップ指数で、政治や経済の面で日本では相変わらず男女格差の是正が進んでいないことが明らかになりました。

それは、労働環境や賞選考など、創作の現場でも同様です。日本劇作家協会会長で演出家でもある瀬戸山美咲さんが、どのような問題意識をもち、また問題解決へどのような道筋を考えているのか。表現の現場調査団の最新の調査結果も交えながら、演劇界のあるべき方向をともに探っていきたいと思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【瀬戸山美咲さん プロフィール】

2001年、「ミナモザ」を旗揚げ。2016年、『彼らの敵』(作・演出)で第23回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞。2019年、『夜、ナク、鳥』(演出)、『わたし、と戦争』(作・演出)で第26回読売演劇大賞優秀演出家賞、2020年、『THE NETHER』(演出)で第27回同賞および同年の成果により第70回芸術選奨文部科学大臣賞新人賞を受賞。現代能楽集X『幸福論』〜能『道成寺』『隅田川』より(長田育恵と共作・演出)では第28回読売演劇大賞選考委員特別賞ならびに優秀演出家賞受賞。近作に『スラムドッグ$ミリオネア』(上演台本・作詞・演出)、『彼女を笑う人がいても』(劇作)、『染、色』(演出)、『ペーター・ストックマン』(翻案・演出)など。各地でコミュニティの人との創作にも継続的に携わる。2022年3月より一般社団法人日本劇作家協会会長。

【濱田元子さん プロフィール】

毎日新聞論説委員兼学芸部編集委員。大阪本社学芸部などをへて、2010年に東京本社学芸部。18年から現職。専門は現代演劇・演芸。ウェブコラム「舞台縦横ときどきナナメ」を随時掲載。

【飯塚友子さん プロフィール】

産経新聞WEB編集室記者。東京都出身。早稲田大在学中は歌舞伎研究会と宝塚歌劇を愛する会に所属。1996年、産経新聞入社。文化部で舞台芸術を担当し、現在はWEBの産経ニュースや、ツイッターのスペースで舞台芸術に関し発信中。twitter(@tomokoiizuka3)

[主催]国際演劇評論家協会[AICT]日本センター http://aict-iatc.jp/
[協力]NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺

思考の種まき講座《11》

座・高円寺では、9月1日(木)から9月18日(日)まで『フランドン農学校の豚』と『小さな王子さま』が上演されます。8月の「思考の種まき講座」では、『小さな王子さま』の脚本・演出を担当するテレーサ・ルドヴィコさんをゲストにお迎えして、作品についてお話をうかがいます。

思考の種まき講座《11》
テレーサ・ルドヴィコさんに聞く
―子どものまなざし、大人のまなざし―

トークゲスト
テレーサ・ルドヴィコ(劇作家・演出家)
髙田恵篤(演劇実験室◉万有引力)
通訳
石川若枝
司会
塚本知佳(国際演劇評論家協会[AICT]事務局長)

日時:8月31日(水)19時~21時
場所:座・高円寺けいこ場
料金:500円(「劇場へいこう!」チケットをお持ちの方、AICT会員、学生は無料です)
お申込み:info@theatre-koenji.jp
(※件名に「テレーサ・ルドヴィコさんに聞く」とご記入の上、本文にお名前、日中のご連絡先TEL、人数を明記してください)

主催:NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺
協力:国際演劇評論家協会[AICT]日本センター

座・高円寺の開館記念作品として製作された『旅とあいつとお姫さま』。区内の公立小学校4年生全員に、劇場で演劇を観てもらうという座・高円寺のプログラム「劇場へいこう!」の最初の作品です。老若男女国籍を問わず、客席に座った観客と真摯に向き合う……言葉で言うと簡単ですが、『旅とあいつとお姫さま』そして2作目『ピノッキオ』でも多くの観客に向けて実践、証明してきた彼女の作品づくりに迫ります。

【テレーサ・ルドヴィコ Teresa Ludovico】
93年よりテアトロ・キズメット(イタリア)で脚本、演出を手掛ける。世界各国で称賛を浴びた『美女と野獣』は、イタリア国内で「子どもと青少年向けの演劇ベストワン賞」を受賞。『小さな王子さま』は、座・高円寺開館記念に創った『旅とあいつとお姫さま』、2作目『ピノッキオ』に次ぐ3作目。日本では他に『雪の女王』『にんぎょひめ』を演出。

シアター・クリティック・ナウ2022(思考の種まき講座《10》)

太田省吾を未来形で受け継ぐ

~国際演劇評論家協会演劇評論賞受賞記念シンポジウム~

演劇・ダンスの優れた批評を顕揚する第27回AICT演劇評論賞に『ゆっくりの美学――太田省吾の劇宇宙』(作品社)が選ばれました。これを記念しシンポジウムを開催します。

パネリスト
西堂行人(演劇評論家、明治学院大学教授)
岡本 章(演出家・俳優、錬肉工房)
笠井友仁(演出家、エイチエムピー・シアターカンパニー、近畿大学講師)

司会
柴田隆子(シアターアーツ編集代表、専修大学准教授)

日時:2022年7月24日(日)18:00~20:00
*17:30~ 第27回AICT演劇評論賞 および 第26回シアターアーツ賞 授賞式
会場:座・高円寺 けいこ場1 (地下3階)
参加費:一般=500円 (会員・学生=無料) *当日清算
予約・問合せ:aictjapan@gmail.com
(予約優先。お名前・人数・連絡先をお知らせください。)

主催:国際演劇評論家協会[AICT]日本センター http://aict-iatc.jp/
協力:NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺

思考の種まき講座《9》演劇フォーラム「劇作家・岸田理生を語る――研究・上演・記憶」

国際演劇評論家協会(AICT)日本センターでは、毎月、座・高円寺を会場として演劇講座を開催しております。6月の「思考の種まき講座」は、昨年『岸田理生の劇世界 アングラから国境を越える演劇へ』を上梓された岡田蕗子さん、アングラ演劇の気鋭の研究者・梅山いつきさんを講師に迎え、劇作家・岸田理生さんについて語っていただきます。

思考の種まき講座《9》演劇フォーラム
劇作家・岸田理生を語る――研究・上演・記憶

日時:2022年6月26日(日) 16:00~18:00
会場:座・高円寺 けいこ場2(地下3階)
参加費:一般=500円、AICT会員・学生=無料
連絡・申込み先:aictjapan@gmail.com
(予約優先。お名前・人数・連絡先をお知らせください)

主催:国際演劇評論家協会[AICT]日本センター http://aict-iatc.jp/
協力:NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

毎年6月には劇作家・岸田理生の作品の連続上演が行われ、28日には「水妖忌」として偲ぶ会が開かれます。関西在住の私も以前この連続上演を通して岸田理生に出会い、岸田さんの作品研究をするきっかけになりました。いつか6月に研究会のようなものをしたいな、と思っていた折に、今回AICT事務局にお声がけいただいたので、「岸田さんについて語り合う場」を作らせていただきます。
講師のお1人を梅山いつきさんにお願いし、2人で進めさせていただきます。前半1時間では講師がそれぞれの視点から劇作家・岸田理生に関して語ります。まず岡田より岸田研究の現状の紹介と拙著の内容紹介を行い、その後、梅山さんより拙著の批評と、資料研究を今後の上演にどのように生かせるのか、という内容でお話いただきます。後半1時間では、客席にご来場の方々のお話をお聞きすることを重視しつつ、前半で出た内容、特に今後の上演にどう生かしていけるか、について深めていけたらと思っています。よろしければみなさまの岸田理生に関する大切な記憶を会場に持ち寄り、対話にご参加いただければ幸いです。(岡田蕗子)

【講師】岡田蕗子(おかだ・ふきこ)

演劇研究者。国際演劇評論家協会(AICT)関西支部会員、京都芸術大学講師、関西の劇団エイチエムピー・シアターカンパニー文芸部員。同劇団の創作を通して岸田理生に出会う。専門は日本の近現代演劇、特に岸田理生の作品研究。著書に『岸田理生の劇世界 アングラから国境を越える演劇へ』(大阪大学出版会、2021年)。

【講師】梅山いつき(うめやま・いつき)

演劇研究者。1981年、新潟県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。演劇博物館で現代演劇に関する企画展を手がけ、現在、近畿大学准教授。アングラ演劇をめぐる研究や、野外演劇集団にスポットを当てたフィールドワークを展開している。著書に『佐藤信と「運動」の演劇』(作品社、第26回AICT演劇評論賞受賞)、『アングラ演劇論』(作品社、第18回AICT演劇評論賞受賞)、『60年代演劇再考』(岡室美奈子との共編著、水声社)など。

思考の種まき講座《8》演劇フォーラム「綺想を紡ぐ―野木萌葱トーク」

国際演劇評論家協会(AICT)日本センターでは、毎月、座・高円寺を会場として演劇講座を開催しております。2022年5月は、「パラドックス定数」を主宰し、数々の快作を放ってきた野木萌葱さんをゲストに迎え、演劇人生、演劇を通して世界の見方についてお話をうかがいます。

※ 5月8日追記
ご好評につき、会場が「けいこ場1」に変更となりました。
予約優先となりますので、事前の申込みをおすすめします。

思考の種まき講座《8》演劇フォーラム
綺想を紡ぐ――野木萌葱トーク(聞き手=西堂行人)

日時:2022年5月29日(日) 16:00~18:00
会場:座・高円寺 けいこ場2けいこ場1(地下3階)
参加費:一般=500円、AICT会員・学生=無料
連絡・申込み先:aictjapan@gmail.com
(予約優先。お名前・人数・連絡先をお知らせください)

主催:国際演劇評論家協会[AICT]日本センター http://aict-iatc.jp/
協力:NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

野木萌葱の名前を頻繁に聞くようになったのは、いつ頃からだろうか。

2010年代に入って、70年代生まれの若い劇作家たちが数多く登場してきた。彼(女)らはいわゆる「3・11」を契機に、社会的な題材を扱う劇を展開してきたのだが、その一人が野木だった。

1998年、大学在学中に「パラドックス定数」というユニットを立ち上げた野木は、2007年の『東京裁判』を契機に、メンバーを固定した劇団に衣替えした。小劇場での地道な活動を継続する中、彼女の名前を一躍世に知らしめたのは、2016年、和田憲明演出による『三億円事件』だった。1968年に府中で起こった強奪事件を犯人の側から真相を描くという意表を突く発想に、多くの観客や批評家が驚かされた。演出家・和田との共同作業は翌17年も続いた。1986年のグリコ・森永事件を扱った『怪人21面相』で、野木の劇作家としての才能に誰しも目をみはったのだ。

さらに、野木の評価を決定づけたのは、2018/19年のシーズンだった。この年、シアター風姿花伝の若手支援プロデュース「プロミシングカンパニー」に彼女の主宰するパラドックス定数が選ばれ、隔月で旧作を再演した。学生の頃から書き、演出してきた野木の作品がレトロスぺクティブとして一挙に日の目を見たのである。野木が若い頃から実に精度の高い作品を発表してきたことが明らかになった。彼女の名を世に知らしめた『三億円事件』と『怪人21面相』も、初演は自劇団だった。(2002年、06年)改めて、演劇界が野木萌葱と「パラドックス定数」を「発見」した一年でもあった。

野木萌葱の作品には、人の常識をぐらつかせる「綺想」がつねに仕込まれている。例えば、昨年末に上演された『Vitalsigns(ヴァイタル・サインズ)』は、謎めいたストーリーで観客の関心を惹きつつ、不意にSF的な想像力で劇を一気に飛躍させる。観客は日常を取り巻く何気ないものの中に得体の知れなさを発見する。『トロンプ・ルイユ』には馬同士の奇妙な対話がある。人馬が一体となった作品なのだが、その嘘臭さの中にこういうこともありうるのではと信じさせる不思議な説得力があった。かと思えば、日本の戦争の内部をえぐる『731』や『東京裁判』など、歴史に素材をとった硬派の作品もある。

野木萌葱はどういう発想でこれほど意表を突く綺想を思いつくのだろうか。その人生と演劇との出会いなどを語ってもらいたい。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【プロフィール】

野木萌葱(のぎ・もえぎ):1977年横浜生まれ。劇作家・演出家。パラドックス定数主宰。日大芸術学部・劇作コース第一期生卒業。2016~18年、読売演劇大賞優秀作品賞受賞、2021年同演出家賞受賞。青年座、新国立劇場、神奈川芸術劇場(KAAT)などに戯曲を書き下ろす。
(4月24日追記:野木さんのプロフィールを修正しました。)

2022年「世界演劇デー」国際演劇評論家協会会長メッセージ

3月27日の「世界演劇デー」に際して、国際演劇評論家協会会長ジェフリー・エリック・ジェンキンスが「試練の時に橋を架ける」と題したメッセージを公開しました。日本語訳を以下に掲載いたします。原文(英語)は、AICT/IATC本部のホームページをご参照ください。

試練の時に橋を架ける

2022年3月25日

ジェフリー・エリック・ジェンキンズ

ひと月前、国際演劇評論家協会(AICT-IATC)は、主権国家であるウクライナに対するロシア政府の侵害行為に対する非難声明を、ロシアの会員たちとともに発表した。IATCは演劇批評と研究に携わる者の集団で、国際的言論、そしてあらゆる芸術形態の中で最も人間的である演劇の称揚を通して、表現の自由という旗を掲げている。

IATCのロシア支部は、甚大な個人への危険をかえりみず、勇敢にもクライナに対する戦争行為を公的に非難した。侵攻終結を訴えた一人の著名なロシア人劇評家は、自宅玄関のドアに「Z」の文字を殴り書きされた。1938年の「水晶の夜」にナチスがユダヤ人におこなった行為を思いおこす者もいる。

「テアトル」誌編集長のマリナ・ダヴィドヴァ氏は、現在自宅を離れ、ヨーロッパのある場所で安全を確保している。先週、英ガーディアン紙に彼女が語ったところによれば、抗議を表明する者を「裏切り者」「外敵同調者」とみなすという声明をロシア政府が出すなど「一ヶ月前には予想さえしなかった」という。アンドリュー・ロス氏によるレポートにおいて、ダヴィドヴァ氏はこう語っている。「かつては、こんな言葉遣いは過激化に対してしか使われなかった。それが今は大統領の口から発せられている。酷い話だ!」

ここ数週間、私たちはあらゆるウクライナ人の頭上に降り注ぐ恐ろしい虐殺行為を目の当たりにしている。そして無辜の市民の不条理な死に、そして一般市民が安全を求めて市街を駆け抜ける中で子供達がうずくまっている映像に、心を痛めている。

ケルソン・シアターのアレクサンドル・クニガ芸術監督が3月23日にロシア軍によって拘束されたという報告が、ウクライナ演劇芸術家組合のボクダン・ストルティンスキイ氏からIATCに届いた。ロシア軍は、ウクライナ劇場の他の芸術監督たちの身柄をも探しているという。世界中の指導的演劇人や人道的活動家たちが大きな抗議の声を上げたことで、クニガ氏は一日も経たないうちに無事に釈放された。

ロシアを戦争犯罪に携わるならず者国家として非難する決議表明を、現在各国政府は用意しているところである。当然ながら、普遍的な共通の大義においてわれわれを結びつけていた絆を取り戻すためにわれわれにできることは限られてくるだろう。演劇を通して人間経験の本質をさらに理解しようとするという大義である。サンクト・ペテルブルグですばらしい演劇作品を再び見ることができる日はいつになるだろう。ウクライナの演劇関係者は爆撃、拉致、そして拷問を生きのびられるのだろうか。

当座しのぎのシェルターで、ディズニーの『アナと冬の女王』の「レット・イット・ゴー」を自国語で歌うウクライナ人少女の姿に感動しない者がいるだろうか。狭苦しくむさ苦しいシェルターで何十人もの避難民に連日囲まれている状況下でこの少女はおずおずと歌い出した。それを誰かがスマートフォンで録画したのだ。シェルターのあちこちで交わされていた人声は徐々に静まっていく中、彼女は変化、復興、そしてわれわれが直面しているあらゆる苦難の克服への可能性を歌ったのである。

そしてわれわれは自問する。彼女は今どこにいるのだろう。変化の時にたって、彼女に未来はあるのだろうか。

運良く、7歳のアメリア・アミソヴィッチさんはポーランドに避難できた。ポーランドのスタジアムのチャリティ・イベントで彼女はウクライナ国家を歌い、英雄の歓迎を受けた。ハッピーエンドだ。しかしハッピーエンドを迎えられない物語が、これからどれだけ起きるのだろう。

今日3月27日、世界演劇デーが世界中で祝われている。AICT-IATCの提携団体である国際演劇協会(ITI)は、例年この日に著名な演劇人や先駆的論者によるメッセージを出している。今年、その役を担った著名なオペラ・演劇演出家のピーター・セラーズは「経験の芸術形態」としての演劇に注目している。

彼は言う。われわれは多様なメディアからくる絶え間ない情報に晒されている。そのためわれわれは、常に「時間の刃先」に立たされている。「あまりに多くの人びとが刃先に立たされている。あまりに多くの馬鹿げた、あるいは予期せぬ暴力が燃え上がっている。そしてあまりに多くの既存システムが構造的に残酷を存続させていることがあらわになってきている」 もし「世界」がなければ、もしグローバル共同体が壊されてしまったら、「世界演劇デー」のなどそもそも必要だろうか。

今こそ世界中の自由を愛する人々、自由を愛する政府が、表現と芸術の自由が守られる安全な世界を実現を目指して立ち上がるべきだ。そしてピーター・セラーズの警告と、明快きわまる呼びかけに耳を傾けるべきだ。「この仕事は人々がバラバラに行えるものではない。この仕事はおこなうのは、一緒でなければならない」

この世界演劇デーにおいて、世界中の政府、世界中の人々が団結し、主権国家間の平和がもたらされる高みを目指そうではないか。われわれの人間性の本質を安全に探求できる場の実現を目指そうではないか。

ジェフリー・エリック・ジェンキンズ(国際演劇評論家協会会長、イリノイ大学演劇学教授、ディカバリー・パートナーズ・インスティテュート(シカゴ)教授会員)