思考の種まき講座《24》

国際演劇評論家協会日本センターは、座・高円寺にて演劇にかかわる講座を開催しています。10月は、社会学者の吉見俊哉さんをお迎えして、演劇と「死者」について考えます。


《思考の種まき講座24》
いたるところに死者がいる:演劇にとって記憶とは何か



講師
吉見俊哉(社会学者)

2023年10月8日(日)16:00~18:00
会場 座・高円寺 けいこ場(地下3階)
参加費 一般=500円(会員・学生=無料) *当日清算
予約・問合せ aictjapan@gmail.com (予約優先)
予約フォーム https://forms.gle/Rj9qZmzacNohtzwJA


概要
演劇とは、死者との対話の技法 なのだと私は思う。アルトーが 『演劇とその分身』 で語ったのは、現代に死者たちを蘇らせる方法としての演劇についてだった。それは、残酷であると同時に悦楽的であるはずだ。シェイクスピアでも、能や歌舞伎でも、数多の死者たちが亡霊として登場する。たが、21世紀の東京にも、日本列島にも、さらに数多の亡霊たちが彷徨っている。私たちは実は、日々そうした亡霊たちに出会っているのだが、気づいていないだけなのだ。現代のデジタル・テクノロジーは、そうした死者たちとの交通路を、つまりは集合的記憶を現前化するための孔を、爆発的に増殖させつつある。当日は、そうした技術的前提のなかで2020年に私がささやかながら試みた、没後20年の演出家如月小春をこの世に蘇らせる実験や、コロナ禍を契機に広がっているEPAD(Eternal Performing Arts Archives and Digital Theatre) 事業について紹介しつつ、それらの意義について論じていきたい。

思考の種まき講座23

国際演劇評論家協会(AICT/IACT)日本センターでは、毎月、座・高円寺で演劇講座を開催しております。
8月は、9月12日(火)に東京経済大学で開催予定の国際シンポジウム「演劇とエコロジー」のプレ企画を兼ねて、第一部に登壇予定の環境アクティビスト黒部睦さんをお迎えします。国際シンポジウムの企画者である三井武人さん、寺尾恵仁さんが聞き手、司会をつとめます。


《演劇とエコロジー》
環境アクティビズムと演劇/パフォーマンス
~参加のあり方をめぐって~

パネリスト
黒部睦(環境アクティビスト、Climate Clock プロジェクト代表)
三井武人(演劇研究者・評論家、近畿大学非常勤講師)
司会
寺尾恵仁(演劇研究、アスブ企画所属俳優・ドラマトゥルク、北星学園大学専任講師)


日時:2023年8月20日(日)16:00~18:00
会場:座・高円寺 けいこ場(地下3階)
参加費:一般=500円(会員・学生=無料)*当日清算
予約フォーム:https://onl.bz/nWaNtfW(予約優先)
問合せ:aictjapan@gmail.com
主催:国際演劇評論家協会[AICT]日本センター
NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺


2023年6月9日(金)、環境アクティビストのグレタ・トゥーンベリさんは、卒業をして学生の身分ではなくなったことを理由に、毎週金曜日にスウェーデンの国会前で続けてきた「スクール・ストライキ」に一区切りつけることを自身のSNSで発表しました。2018年8月にひとりで始めたこの活動が「 Fridays For Future 」の名前で瞬く間に世界に広がり、若者を中心とした多くの人が環境問題の解決のために声をあげるきっかけとなったことにとても驚いたとも語っています。
また、自らが編集に携わった近著『気候変動と環境危機』の中で、「Fridays For Future」は抗議活動ではなく環境危機を広めることによって人々を啓蒙するための行動であるとも述べています。
少し強引ですが、これを皆さんに馴染みのある「演劇(パフォーミング・アーツ)」に結びつけるなら、「Fridays For Future」は人々の関心を環境問題に惹きつけるために生まれた「パフォーマンス(創造的行為)」であり、彼女は「Think Grobally, Act Locally(地球規模で考え、足元から行動しよう)」を実践し、多くの共感を呼んだ有能な「パフォーマー(実践者)」と言えるのではないでしょうか?
加えて、彼女の考えに共感し共に行動を起こす多くの人たちがいることを考えるなら「Fridays For Future」は、トゥーンベリさんを起点として世界中に広がった「参加型パフォーマンス」とも言えるかもしれません。
このような「演劇(芸術的行為)」と「アクティビズム(政治的行為)」の密接な関係性を、環境アクティビストで「Fridays For Future Tokyo」のオーガナイザーを務める黒部睦さんを交えて皆さんと一緒に考え、議論していきたいと思います。


黒部睦さん
国立音楽大学声楽専修4年。2001年生まれ、東京都出身。高校生時代にSDGsの啓蒙を始め、スウェーデンでの研修をきっかけに気候変動の危機に気づく。現在は「Fridays For Future Tokyo」オーガナイザーや「Climate Clock Japan」の代表として気候変動対策に取り組む。東京MX「堀潤モーニングFLAG」コメンテーター、TBSラジオ「アシタノカレッジ」buddyとして出演中。

三井武人さん
英国ローハンプトン大学卒業。筑波大学大学院修了。専門は、イギリス演劇、イマーシブ・シアター、観客論、演劇批評等。今年9月に行われるAICT/IATC国際シンポジウム「演劇とエコロジー」の共同オーガナイザーを務めている。

寺尾恵仁さん
日独現代演劇の俳優論を専門とする。今年9月に行われるAICT/IATC国際シンポジウム「演劇とエコロジー」では、共同オーガナイザーとして、第一部の司会を務める予定。

シアター・クリティック・ナウ2023(思考の種まき講座22)

第28回AICT賞受賞を記念して、受賞者お二人を中心に、シンポジウムを開催いたします。一見まったく異なる、18世紀イタリアのゴルドーニと、明治期の歌舞伎写真というテーマを、「新しいメディアと演劇の関係」という新たな切り口で論じていきたいと思います。


思考の種まき講座22
シアター・クリティック・ナウ2023
「新しいメディアと演劇」



パネリスト
大崎さやの(イタリア演劇・文学研究)
村島彩加(近代日本演劇研究)
井上 優(演劇理論、西洋演劇史研究)
山下純照(演劇美学者)


日時:2023年7月30日(日)17~19時
※16時30分より第28回AICT演劇評論賞および第27回シアターアーツ賞の授賞式を行います。
会場:座・高円寺けいこ場(地下3階)
参加費:一般500円(会員・学生は無料)※当日清算
予約フォーム:https://forms.gle/7LEkgQMER432KZMa7 予約優先
問合せ:aictjapan@gmail.com
主催:国際演劇評論家協会[AICT]日本センター
http://aict-iatc.jp/
NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺


概要
大崎さやの著『啓蒙期イタリアの演劇改革―ゴルドーニの場合』は、イタリアの劇作家ゴルドーニの作品の劇評を通して、彼の演劇改革の実態を浮き彫りにする著作である。ゴルドーニが活躍した18世紀、西洋では新聞・雑誌といったジャーナリズムが勃興し、批評文化が花開いていった。
一方、村島彩加著『舞台の面影―演劇写真と役者、写真師』は、明治時代に新たに登場した写真というメディアと歌舞伎の関係を、團十郎や菊五郎といった歌舞伎役者や、彼らを撮影した写真師を中心に、出版や絵画、アーカイブ等の周辺文化と共に多面的に描き出すものである。
両著作はイタリア演劇と歌舞伎と形式は異なるものの、一方はジャーナリズム、一方は写真と、どちらも当時新たに登場したメディアを通して演劇を扱っている。シンポジウムでは、この新しいメディアと演劇の関係を、参加者のみなさんと共に考えてみたい。
また、両者に共通する関心として、観相学の演技への影響や演技の「型」についてなど、演技に関するいくつかのトピックが挙げられる。共通する問題点、関心を持つ二人が互いの著作を通して語り合うことで、各著書単独では見えてこないものを浮彫にし、参加者のみなさんの新たな発見・関心につながれば幸いである。


大崎さやのさん
イタリア演劇・文学研究。博士(文学、東京大学)。現在、東京藝術大学等にて非常勤講師。著訳書に『啓蒙思想の百科事典』(共編著、丸善出版)、『啓蒙期イタリアの演劇改革―ゴルドーニの場合』(第28回AICT演劇評論賞・第55回河竹賞奨励賞受賞、東京藝術大学出版会)、『演劇と音楽』(共著、森話社)、『ベスト・プレイズⅡ―西洋古典戯曲13選』(共訳著、論創社)、『西洋演劇論アンソロジー』(共訳著、月曜社)、『イタリアのオペラと歌曲を知る12章』(共著、東京堂出版)、『オペラ学の地平』(共著、彩流社)、『アルフィエーリ 自伝』(共訳、人文書院)、他。

村島彩加さん
研究分野は近代日本演劇(特に歌舞伎の近代化、演劇写真、宝塚歌劇)。博士(文学、明治大学)。近著に『舞台の面影−演劇写真と役者、写真師』(森話社。第44回サントリー学芸賞、第28回AICT演劇評論賞)、共著に『演劇とメディアの20世紀』、『演劇と音楽』、『興行とパトロン』(以上、森話社)ほか。論考に「ミュージカル『PUCK』をめぐって 小池修一郎試論(2)」(『パラゴーネ』第7号 青山学院大学比較芸術学会)など。

井上 優さん
明治大学文学部教授。演劇理論、西洋演劇史研究。近年は岩田豊雄の業績の再評価などを研究している。明治大学のシェイクスピア上演(明治大学シェイクスピア・プロジェクト)をコーディネイターとして統括・指導。国際演劇評論家協会日本センター会員。日本演劇学会理事。主要著作として『演劇の課題Ⅱ』(共著、三恵社、2015年)、最近の論文に「岩田豊雄「演劇皆無に對する感想」(一九三三)を読む」(2020年)、「岩田豊雄の中のシェイクスピア――1955年 福田恆存演出『ハムレット』成立の一背景」(2020 年)。

山下純照さん
成城大学文芸学部教授。演劇美学者。近現代戯曲の「語り」と演じる部分の関係性に基づき、時間軸が往還するタイプの作品(日本語、英語、ドイツ語圏)を研究。論文リストはresearchmap→Yamashita Yoshiteruを参照。翻訳にフィッシャー=リヒテ『演劇学へのいざない』(共訳、2013年)、編著に『西洋演劇論アンソロジー』(西洋比較演劇研究会と共編、2019年)がある。

国際シンポジウム「演劇とエコロジー」

国際演劇評論家協会(AICT/IATC)は2023年9月に日本で国際理事会を実施します。それに合わせて、東京経済大学とAICT日本センターは、共同で「演劇とエコロジー」をテーマとした国際シンポジウムを開催いたします。



国際シンポジウム
「演劇とエコロジー」

開催日:2023年9月12日(火)
会場:東京経済大学 大倉喜八郎 進一層館ホール
参加無料・予約優先

開催概要
演劇は、人間の行為によって人間ならざるものへの想像力を働かせる。エコロジーは、自然を通じて人間の身体と情動への意識を転回させる。シンポジウム「演劇とエコロジー」は、政治・社会・芸術・歴史的視座から、全世界的な気候危機の時代における人間の表現を問い直す。
第1部では民俗学、社会運動、文化活動の各方面から、人間の表現が自然とどのような関係を取り結んできたか・取り結ぶべきかを明らかにする。人間の身体表現は自然に調和するものであるべきか、それとも不自然なものであるべきか? 自然環境の変化は人間の表現にどのような影響を及ぼすか? そして共同体はどのように当事者性と向かい合うべきか?
第2部ではより具体的な事例をもとに、グローバリゼーションの時代の演劇における人間中心主義の問題を議論する。デジタル化の時代にアナログメディアである演劇の果たすべき役割とは? 人間中心主義を超えるとは人間が不要であるということなのか? そして人ならざるモノへの想像力が生み出すものとは?


第1部(14:00~16:30)
「パフォーミング・アーツは自然におさまるか?―物語・身体・共同体をめぐって―」

パネリスト
赤坂憲雄(民俗学者、学習院大学教授)
黒部睦(環境アクティビスト、Climate Clockプロジェクト代表)
塚原悠也(contact Gonzoメンバー、KYOTO EXPERIMENT共同ディレクター)
花崎攝(シアター・プラクティショナー、演劇デザインギルド)
スペシャル・レポート
ハリマ・タハン(AICT/IATCアルゼンチン代表理事、ブエノスアイレス大学哲学科パフォーミング・アーツ研究所エリアコーディネーター)

*手話通訳あり

第2部(17:30~19:30)
「演劇は人間中心主義を超えるべきか?―人間とモノのはざまで―」

パネリスト
宮城聰(演出家、SPAC 静岡県舞台芸術センター芸術総監督)
ヴィッキー・アンゲラキ(演劇研究者、ミッド・スウェーデン大学教授)※都合により、アンゲラキさんは来日されず、映像でのご発表となりました。あらかじめご容赦ください。

ディスカッサント
ジェフリー・エリック・ジェンキンス(AICT会長、イリノイ大学教授)
ツー・ニン(AICT中国代表理事)
パヴィット・マハサリナンド(AICTタイ代表理事)
*日本語通訳・手話通訳あり


申し込み方法
予約フォーム(https://docs.google.com/forms/d/1-4CvmE2PbdythfKOYdkzBSn8wT_WcfuWTr0LIQcXAVs
またはメールにてご予約ください。
※メールの場合「件名:演劇とエコロジー」とし、「お名前、人数、電話番号」を明記ください。
※広い会場を用意しておりますが、参加人数把握のため、事前予約にご協力ください。


AICT/IATC(国際演劇評論家協会)について
AICT/IATC(Association Internationale des Critiques de Theatre / International Association of Thetare Critics)はユネスコの下部組織で、世界約50の国・地域が参加する舞台芸術評論家の協会です。1956年にパリで設立され、舞台芸術評論の発展に寄与し、それを通じて舞台芸術に関わる国際会議・国際交流を行い、異文化間の相互理解を深める活動をしています。https://aict-iatc.org/en/

主催:東京経済大学学術研究センター
共催:国際演劇評論家協会(AICT)日本センター
問い合わせ:aictjapan@gmail.com(国際演劇評論家協会日本センター)、042-328-7930(東京経済大学本橋哲也研究室)

思考の種まき講座《21》

国際演劇評論家協会(AICT)日本センターでは、毎月、座・高円寺で演劇講座を開催しております。6月の講座は、9月に開催予定のAICT国際シンポジウム『演劇とエコロジー』に向けて、登壇予定の赤坂憲雄さんと花崎攝さんをお招きします。


思考の種まき講座21
《演劇とエコロジー》
水/土/身体をめぐる思考
――人間中心主義を超えて――


パネリスト
赤坂憲雄(民俗学者、学習院大学教授)
花崎 攝(シアター・プラクティショナー、演劇デザインギルド)
司会=寺尾恵仁(北星学園大学専任講師・ドイツ演劇研究)



[日時]2023年6月17日(土)19:00~21:00
[会場]座・高円寺 けいこ場(地下3階)
[参加費]一般=500円(会員・学生=無料)*当日清算
[予約フォーム]https://forms.gle/aaMJWfnceTA7gzum7(予約優先)
[問合せ]aictjapan@gmail.com

主催:NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺
協力:国際演劇評論家協会[AICT]日本センター http://aict-iatc.jp/


私達の身体は、物質的な循環によって常にこの世界とつながっている。自然を支配し、収奪する近代資本主義は、水や土や大気を通じて、私達自身の身体をも支配し、収奪する。気候変動による全世界的な災害が起きる時、私達自身の内なる自然もまた荒れ狂っているのかもしれない。「エコロジー」とは、自然という媒体を経由して、私達の身体と情動について問い直すための契機である。水や土といったエレメントは、私達人間(の表現)に何を与えてきたのか。気候危機によってあらゆる人間が当事者となることを求められる時、私達の身体には何が起こっているのか。演劇における想像と創造の可能性が、改めて問われている。


赤坂憲雄さん
東京都出身。学習院大学教授。専門は民俗学・日本文化論。東北学を掲げて、地域学の可能性を問いかけてきたが、東日本大震災を経て、東北学の第二ステージを求めるとともに、武蔵野学を探りはじめている。また、食べること・交わること・殺すことが交歓する風景に眼を凝らしている。主な著書に、『排除の現象学』『東北学/忘れられた東北』(岩波現代文庫)、『民俗知は可能か』(春秋社)、『性食考』『ナウシカ考』(岩波書店)、『奴隷と家畜』(青土社)、『災間に生かされて』(亜紀書房)ほか多数。

花崎 攝さん
早稲田大学卒業後、劇団黒テントに参加。ロンドン大学ゴールドスミス校で芸術学修士を取得。ワークショップ/プロジェクトの企画、進行、構成演出、俳優、講師など、現在は主に応用演劇の分野で活動している。主な仕事に、アジアのパフォーマーとの交流と創作を行うアジア・ミーツ・アジア(1998~)、水俣病患者と市民とのプロジェクト「水俣ば生きて」(2006)、平和構築のための「インドネシア・アチェの子どもたちのための演劇ワークショップ」(2006-09)、コーディリエラ地域(フィリピン)での環境教育プロジェクト(2014-21)、ドホーク(イラク)での平和構築プロジェクト(2022~)など。世田谷パブリックシアターでは継続的にコミュニティ・シアタープロジェクトを担当。障害のある人との活動も多数。日本大学芸術学部、武蔵野美術大学、立教大学で非常勤講師。

思考の種まき講座《20》

国際演劇評論家協会(AICT)日本センターでは、毎月、座・高円寺で演劇講座を開催しております。5月の講座は「舞台上の戦争」と題し、長年、戦争や紛争地帯の演劇に関心を持ち続けてこられた村井華代さんにお話しいただきます。


舞台の上の戦争

―思考の種まき講座20―



[日時]2023年5月27日(土)16:00~18:00
[会場]座・高円寺 けいこ場(地下3階)
[参加費]一般=500円(会員・学生=無料) *当日清算
[予約フォーム]https://forms.gle/w3xa7Wo23p4emifT6 (予約優先)
[問合せ]aictjapan@gmail.com

主催:NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺
協力:国際演劇評論家協会[AICT]日本センター http://aict-iatc.jp/


演劇の歴史は、戦争と切っても切り離せない、と再認識すべき時代がやってきた。
戦争は、演劇の最も古く、かつ決して古びない題材であった。
そして幸いにも戦争を経験しない人間は、演劇的な表象から戦争とは何かを学んできた。
ならば演劇は、戦争をいかなるものとして描いてきたか?
2500年余の西洋演劇の歴史の中で、戦争は時に熱烈に称えられ、時に甚大な犠牲と引き換えに糾弾されてきた。
今、我々の日常は、現実の戦争という《演劇》を見ることへの《慣れ》に侵食されつつある。
我々の思考の一部と化した《演劇化された戦争》を意識することによって、我々は「新たな戦前」に抗わなければならない。


村井華代(むらい・はなよ)さん

共立女子大学文芸学部教授。国別によらず、現象学・キリスト教神学等による演劇記述、反演劇主義、大江健三郎の演劇引用など、様々な演劇的諸現象を対象とする。近年は専らイスラエル演劇を研究、翻訳戯曲モティ・レルネル作『イサク殺し』は2020年ITI日本センター企画「紛争地域で生まれた演劇12」にて公開された。また民主主義トレーニングとしての演劇授業プロジェクトKALECO主宰として、年平均100人の学生による舞台劇『青い鳥』上演。

思考の種まき講座《19》

国際演劇評論家協会(AICT)日本センターでは、毎月、座・高円寺で演劇講座を開催しております。4月は、シリーズ講座〈観客を創る〉の第一回として、山の手事情社の安田雅弘さんをお迎えして、お話をうかがいます。


シリーズ講座〈観客を創る〉

演劇活動の現場から――安田雅弘さん(山の手事情社)と考える



[日時]2023年4月16日(日)16:00~18:00
[会場]座・高円寺 けいこ場(地下3階)
[参加費]一般=500円(会員・学生=無料) ※当日清算
[予約フォーム]https://forms.gle/24BqjXvgGpskZsR28 (予約優先)
[問合せ]aictjapan@gmail.com
主催:NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺
協力:国際演劇評論家協会[AICT]日本センター
(*本シリーズは、4月・9月・12月・3月を予定しています。)


「私たちはどんな場合でも、劇を半分しか作ることができない。あとの半分は観客が作るのだ。」(寺山修司)

来年、結成40周年となる山の手事情社は、ルーマニア・シビウ国際演劇祭での招聘公演をはじめ、国内外で数多くの公演を行ってきました。
現在は、大田区に本拠地を構え、大人と子どもが一緒に楽しめる作品や『馬込文士村 空想演劇祭』などの地域と連携したプログラム、また、演劇関係者のみならず教育関係者も参加するワークショップなど、多彩な演劇活動を展開しています。
さまざまに活動していく中で、どのような「創客」があったのか。約40年の演劇活動から、〈観客を創る〉とはどのようなことか、さらに演劇の公共性についてお話をうかがいます。

安田雅弘(やすだ・まさひろ)さん
演出家、劇団 山の手事情社主宰。1962年東京生まれ。早稲田大学卒業。1984年劇団 山の手事情社を結成。《四畳半》と呼ばれる独自の演技・演出法を貫く先鋭的な劇団として注目される。国内だけでなく、海外での評価も高く、2012年にはルーマニア国立ラドゥ・スタンカ劇場の委嘱による演出作『女殺油地獄[A JAPANESE STORY]』(原作:近松門左衛門)が同劇場のレパートリー作品となる。同年、フランス国立高等演劇学校コンセルヴァトワールでマスタークラスのワークショップを実施。《演劇的教養》の敷衍にも力を注ぎ、委嘱公演の演出、各地でワークショップの講師、桜美林大学非常勤講師、全国高等学校演劇大会などのコンクールの審査員をつとめる。シビウ国際演劇祭で「特別功労賞」を受賞。著書『魅せる自分のつくりかた〈演劇的教養〉のすすめ』(講談社選書メチエ)他。

思考の種まき講座《18》

国際演劇評論家協会(AICT)日本センターでは、毎月、座・高円寺で演劇講座を開催しております。3月は河合祥一郎さんをお迎えして、シェイクスピアと狂言についてお話を伺います。


劇カフェ「シェイクスピア×狂言」

ゲスト:河合祥一郎
聞き手:山本健一・小田幸子



【日時】2023年3月12日(日)16~18時
【会場】座・高円寺「けいこ場」(地下2階)
【参加費】一般=500円(会員・学生=無料) *当日清算
【予約フォーム】 https://forms.gle/LXmNuLb5FRJ9tSFr7
※予約優先。「予約フォーム」または、下記「問合せ」メールアドレスからご予約ください。(メールの場合、件名に「劇カフェ」とご記入の上、お名前・人数・日中のご連絡先TELを明記してください。)
【問合せ】aictjapan@gmail.com
【主催】国際演劇評論家協会[AICT]日本センター http://aict-iatc.jp/
【協力】NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺


AICT会員から専門分野の話をトーク形式でうかがう「劇カフェ」。
今回は、シェイクスピアがご専門の河合祥一郎氏をお招きしました。
シェイクスピア上演台本の翻訳を中心に、文楽や新作狂言の脚本、Kawai Projectにおける新訳と演出と、その活動は演劇の現場に広がっています。
世田谷パブリックシアターで上演した『国盗人』・『マクベス』ほか、狂言師・野村萬斎氏との共同作業を手がかりに、シェイクスピアと狂言、古典劇と現代劇、東洋と西洋など、多彩な対立項をはらんだ「日本におけるシェイクスピア上演」について、たっぷりお話しいただきます。


河合祥一郎(かわい・しょういちろう)さん
東京大学教授。ケンブリッジ大学と東京大学より博士号取得。著書に中公新書『シェイクスピア~人生劇場の達人』、サントリー学芸賞受賞作『ハムレットは太っていた!』(白水社)ほか。2003年の野村萬斎主演『ハムレット』からシェイクスピア新訳をスタート。その後、萬斎師とは『国盗人』(2007初演、2009再演)、『マクベス』(2010初演、2013再演、2014再再演、2016四演)、新作狂言『根日女』脚本(2015)、リーディング『アテネのタイモン』(2019)、リーディング『ハムレット』(2022)、『ハムレット』(2023)(以上いずれも萬斎演出)、狂言英語字幕、蜷川演出『ファウストの悲劇』(2010)でご一緒した。Kawai Projectを企画して演出も手がけ、2019年第11回小田島雄志・翻訳戯曲賞特別賞を受賞。作・演出の『ウィルを待ちながら』は2022年6月シビウ国際演劇祭に招聘された。2023年7月1日~11日、早稲田どらま館にて新作『悪い仲間』(作・演出)上演予定。

山本健一(やまもと・けんいち)さん
演劇評論家。1944年東京生まれ。朝日新聞学芸部で文化・演劇を担当。東京本社編集委員を経て退職。国際演劇評論家協会(AICT)日本センター前会長。朝日新聞夕刊他で演劇評を執筆している。著書に『劇作家秋元松代ー荒地にひとり火を燃やす』(AICT演劇評論賞)。

小田幸子(おだ・さちこ)さん
能・狂言研究家。博士(文学)。第39回観世寿夫記念法政大学能楽賞受賞。専門は能・狂言の作品研究と演出史。新作や復曲のドラマトゥルク、講演、解説、批評など研究と舞台をつなぐ活動も行っている。AICT会員・シアターアーツ編集員。

第27回シアターアーツ賞結果発表

先日、第27回シアターアーツ賞の選考会が行われ、以下の通り、今年度の受賞作が決定しましたのでご報告申し上げます。

【大賞】佐藤未来羽「白井晃演出『アルトゥロ・ウイの興隆』―「熱狂」と「距離」をめぐって―」

【佳作】高嶋慈「プッチーニ『蝶々夫人』の批評的解体と、〈声〉の主体の回復 ―ノイマルクト劇場& 市原佐都子/Q『Madama Butterfly』」

第27回シアターアーツ賞結果発表

受賞作と選評は『シアターアーツ』第67号に掲載予定です。

舞台評論家たちによるユネスコ傘下の国際組織の日本支部です。