●巻頭言
喜志哲雄 劇評家の仕事(2)
●クロス劇評『KEBAB』
岡田祥子 故郷喪失 自壊する若者たち
岡田蕗子 にっぽんの「サラリーマン難民」ヘ ドイツからの思考訓練のお誘い
●時評・発言
中西理 大竹野正典氏の早すぎる死を悼む
●劇評
星野明彦 真っ当な不条理と演出家の死 兵庫県立ピッコロ劇団実験劇場off off vol.2『動物園物語』
藤原央登 「らしい」と「らしくない」の狭間で 青年団国際交流プロジェクト『鳥の飛ぶ高さ』
大手理絵 他にすがるものもなく〜鈴江戯曲の中の「共依存」〜演劇ユニット昼の月『顔を見ないと忘れる』
神崎舞 詩情あふれる世界への旅 日加共同制作『TRAIN』
●関西ダンス時評
古後奈緒子 コンテンポラリーダンスの成熟を想像してみる(2)
関係の場としての劇場
ArtTheater dB 神戸柿落としダンス公演「trip2009-07-01 02:10:57″
新国立劇場の自省と再生を願う演劇人の声明
新国立劇場の自省と再生を願う演劇人の声明
新国立劇場の演劇部門次期芸術監督の選考について、私たちは二度にわたって(2008年7月14日、7月22日)声明を発表し、その選定プロセスに疑問を投げかけてきました。新国立劇場運営財団は、守秘義務を理由に明確な回答を避けてきましたが、本年5月7日付で財団ウェブサイトに発表された「平成20年度第3回理事会における決定」という告知は、この問題を曖昧にしたまま幕引きをはかろうとする財団の姿勢を示すものとして見過ごすことはできません。
告知によれば、今年3月24日に開かれた第3回理事会では、次期芸術監督の選考委員(演劇部門)でもある理事から「昨年5月の選考委員会は自由な議論の下に適正なプロセスで行われ、最終的に満場一致で次期芸術監督予定者を選出した」との報告がなされ、「同選考に関しては、今後理事会で再議しないことが圧倒的多数で確認されました」とのことですが、これは「鵜山仁現芸術監督に続投の意思がない」という事実に反する情報を執行部から提示された上での選考だったと複数の選考委員が証言したことに対しての反証とはなり得ていません。また、この理事会直後に小田島雄志理事が辞任を表明し、続いて永井愛理事が辞任届を送付したという異例の事態は、2 人の演劇関係理事の執行部・理事会への深い不信と失望を表すものだと考えます。
芸術監督をどのような議論のもとに選ぶのかということは、新国立劇場がどのような未来を目指すのかという選択とも重なるはずです。「理事長・執行部の望む人を選ばせるために情報操作をしていいのか」「現芸術監督再任の可否について、芸術面での評価が示されず、『コミュニケーションがとりにくい』ことが理由とされていいのか」等々、私たちが声明や記者会見で投げかけた疑問は、「理事長・執行部の恣意的な運営を是とするのか」、それとも「芸術家を尊重し、開かれた議論の展開される劇場を是とするのか」という問いかけでもありました。
これに対して、理事長・執行部から未だに具体的な説明や反論がなされない以上、私たちは、理事長と執行部が、説明もできず、反論もできないのだと結論づけざるを得ません。それを黙認する理事会も著しく自己検証能力に欠けることは明らかであり、このような執行部・理事会に新国立劇場の未来を託すことに、私たちは大きな不安を感じます。
財団の5月7日付告知は「参考」として、ある理事の意見を引用しています。「演劇は公のお金で支援されるものですが、それを得る努力は演劇人の側がしなければならない」「芸術監督は進んで官僚を味方につけるべき」というその主旨は、2001年に公布・施行された「文化芸術振興基本法」の理念に逆行するものではないでしょうか。
「文化芸術振興基本法」は、文化芸術が人間に多くの恵沢をもたらすものとして、その振興に基本理念を定め、文化芸術活動を行う者の自主性、創造性が十分に尊重され、その地位の向上がはかられ、その能力が十分に発揮されるように考慮されなければならないと総則に明記しています。新国立劇場の発足時に、まだ同法は制定されていませんでしたが、公益財団法人への移行を予定する新国立劇場運営財団は、それに伴う定款、内部規程の見直しを迫られています。この機会に、財団は同法の理念を定款、内部規程に反映させ、また、より透明性の高い組織として運営の改善をはかるべきです。
特に、新国立劇場の根幹を成す芸術監督制度には、さらに検討が加えられるべきでしょう。その任期、その権限、その選考方法などについて、財団は芸術家、識者と広く意見交換を行い、共に考察を深めるべき時を迎えているのではないでしょうか。
私たちは、新国立劇場運営財団が、次期芸術監督予定者選定にあたって事実をねじ曲げ、情報操作したことと、今回のような事態を招いたその後の対応を、許すことはできません。あらためて、新国立劇場運営財団に対して、釈明と謝罪を要求します。
新国立劇場が自省、再生できる組織であることを私たちは切に願っています。
2009年6月19日
賛同連名(6月18日現在)
井上ひさし 大笹吉雄 木村光一 ケラリーノ・サンドロヴィッチ 鴻上尚史 坂手洋二 篠原久美子 島次郎 扇田昭彦 永井愛 西堂行人 蜷川幸雄 ペーター・ゲスナー 別役実 マキノノゾミ 松岡和子 松本修 横内謙介 流山児祥 渡辺えり
日本劇作家協会 日本演出者協会 国際演劇評論家協会日本センター
act14号目次
●巻頭言
出口逸平 すきまの愉しみ
●劇評
藤原央登 壁ノ花団『悪霊』一妖女の悪霊-
柳井愛一 座敷童子が見えてしまった時-空の駅舎『太陽風』-
太田耕人 一本のペンの魔法-M、0.P.『エンジェル・アイズ』再見-
●関西ダンス時評
中西理 KHOK1K1KIKI『おめでとう』
●時評・発言
粟田イ尚右 『662』の金字塔-「大阪労演」の奇跡と終焉──
永田靖 劇団「くるみ座」のこと,
権藤芳一 十三夜会のこと
●海外演劇時評
市川明 密陽の熱い嵐-密陽国際演劇祭に参加して──
瀬戸宏 北京で観た野戦之月海筆子『変幻痂殼城』
編集後記
act17号目次
●巻頭言
中西理 セミネール「現代日本演劇・ダンスの系譜」へのお誘い
●劇評
藤原央登 支配の階層 dracom 『ハカラズモ』
小林社務 翻訳劇としての『瀕死の王』
須川渡 チェーホフを通過することの意味ピッコロ劇団『桜の園』
菊池あずさ 母の愛、子の想い、そして我々に残されたもの 河東けいひとり芝居『母』
瀬戸宏 必ずしも奥のみえない人物像劇団未来版『歌わせたい男たち』を観て
●関西ダンス時評
中西理 集団創作に挑戦する新集団 e-dance立ち上げ公演『狩りプソ☆スピカ』
●時評・発言
星野明彦 芝居から少し離れて
市川明 ブレヒト・ケラーの韓国公演 『ゴビ砂漠殺人事件』上演が残したもの
永田靖 京都府立文化芸術会館の試み
編集後記
シアター・クリティック・ナウ08「唐十郎の劇世界」
AICT(国際演劇評論家協会)日本センター主催
シアター・クリティック・ナウ08「唐十郎の劇世界—AICT賞受賞式と記念シンポジウム—」開催
60年代以降の現代演劇を切り開いた唐十郎と、40年間紅テントと伴走した演劇評論家・扇田昭彦の渾身の劇評集。今、さまざまな世代が、唐十郎の劇世界を語り合う。
AICT(国際演劇評論家協会)日本センターが開催する恒例の「シアター・クリティック・ナウ」は、演劇批評の活性化のためのシンポジウムです。
また、「シアターアーツ賞」(最も優れた新進気鋭の演劇評論賞)、AICT演劇評論賞(最も優れた演劇書)の授賞式も同時に開催されます。
日時 2008年12月21日(日)午後6時より
会場 キャロットタワー5F世田谷文化生活情報センターセミナールーム
料金 1000円 予約(FAX)03-5432-1529
*定員80名ですので、あらかじめご予約ください。
●第一部 授賞式 午後6時より第13回AICT賞授賞式、および第12回シアターアーツ賞授賞式
第13回AICT賞受賞作
扇田昭彦『唐十郎の世界』(右文書院)
第12回シアターアーツ賞佳作
嶋田直哉 語られぬ「言葉」たちのために-野田秀樹『ロープ』を中心に
●午後7時よりシンポジウム『唐十郎の劇世界』
パネリスト
唐十郎(劇作家・演出家・小説家・俳優/劇団唐組主宰)
堀切直人(文芸評論家・編集)
金守珍(演出家・俳優/新宿梁山泊主宰)
中野敦之(演出家/劇団唐組主宰)
扇田昭彦(演劇評論家・AICT演劇評論賞受賞)
司会=西堂行人(演劇評論家)
◆第13回AICT演劇評論賞受賞作高田昭彦著『唐十郎と劇世界』
(選評より抜粋)
「劇評家、泉田の言葉から紡ぎ出される唐十郎ワールドに引き込まれ、一気に読んだ。他の候補作とは中身の重さという点でかなり差があると感じた。」(市川明)
「選考委員会の席上で『今こそ』という声があがった.(略)『今こそ』には、扇田氏が『旬』の劇評家であり、今回唐十郎という対象を媒介に、今までの功績を世に示した(略)。」(田之倉稔)
☆
扇田昭彦—1940年東京生まれ。朝日新聞のほか、雑誌「ミュージカル」「ダンスマガジン」に劇評を執筆。著書に『日本の現代演劇』『ミュージカルの時代』『劇談』『舞台は語る』他がある。
主催=AICT(国際演劇評論家協会)日本センター
提携=世田谷パブリックシアター 後援=世田谷区
act16号目次
●巻頭言
中西理 柳井愛一氏の逝去を悼む
●劇評
藤原央登 この時代の三人劇 東京デスロック『3人いる!』
高本能尋 作品を読む文脈 ナントカ世代『紙風船打粗忽長屋』
早野明彦 誤解されないための芝居作りとは『歌わせたい男たち』と『族譜』
出口逸平 怖くない怪談 白石加代子「百物語」シリーズ第二.十四夜三遊亭円朝『怪談牡丹燈龍』
市川明 肉(肉欲)と肉(食肉)との現代ドラマ 燐光群の『ローゼ・ベルント』
●関西ダンス時評
中西理 若手劇団が歌舞伎舞踊の現代化に挑戦 木ノ下歌舞伎「三番叟/娘道成寺」
古後奈緒子 視線と身体の間に開かれる出会い損ねの可能性 j.a.m. dance theatrer『忘れてしまえ、すべてはすんだ話だ』
●時評・発言
Till Weingaertner 日本の舞台ユーモアにおける「事実性」と「フィクション|
瀬戸宏 日中演劇交流私見
編集後記
2008年度 劇評講座(第6回)公開トーク
「新国立劇場 芸術監督“交替”問題とは何か」
4月から始まった「劇評講座」の第6回は、劇作家・演出家の永井愛さん(二兎社)をゲストにお招きします。
永井さんは最近、新国立劇場の芸術監督“交替”に関して、重要な発言をされました。すでに新聞等でも報道され話題になっていますが、同劇場の理事長が独断的ともいうべき行動で、演劇の創造現場に介入してきたのです。これは芸術家の権利と尊厳にも関わる問題でもあり、今後の文化行政に抜き差しならない波紋を呼ぶことが予想されます。
この機に、芸術監督制度とは何か、文化行政と創作家はどう向かい合うべきか、国家と演劇はどのような関係を持つべきなのか、といった根源的な問題について議論したいと思います。
パネラーには、永井愛さんの他、新聞ジャーナリズムの最前線で取材を続けられている高橋豊氏(毎日新聞)、山口宏子氏(朝日新聞)を加え、多角的な議論を予定しています。(司会・進行=西堂行人)
なお今回は公開トークとなります。受講生以外の方でも参加できますので、ぜひ会場まで足をお運びください。
■日時;2008年9月14日(日)18:30〜20:30
■会場;せたがや文化財団 セミナールーム(世田谷パブリックシアター5F)
■パネラー;永井愛(劇作家・演出家/二兎社)、高橋豊(毎日新聞専門編集委員)、山口宏子(朝日新聞論説委員)
■申し込み先;(03)5432-1526
※人数の限りがありますので、入場できない可能性があります。必ず予約をお願いいた します。
■参加料;1000円
■主催;AICT(国際演劇評論家協会)日本センター+「シアターアーツ」編集部
■提携;世田谷パブリックシアター
新国立劇場「芸術監督選定プロセスの詳細開示を求める声明」に参加
芸術監督選定プロセスの詳細開示を求める声明
新国立劇場運営財団は6月30日、オペラ、舞踊、演劇の次期芸術監督を発表しました。
演劇については、「6月23日の理事会では鵜山監督の続投を主張する声もあったが、遠山敦子理事長に一任となった」と、報道されていますが、採決が不可能だった理事会の審議過程そのものを問題視する意見が出ています。また、芸術監督の選任について、選考委員会に差し戻すこともなく、なぜ理事長に一任するという異例な結果になったのかも不明瞭なままです。
7月1日付読売新聞、7月7日付朝日新聞、7月8日付毎日新聞でも指摘されているように、財団執行部が進めた今回の芸術監督交代については、各方面から疑問の声が上がっており、選考委員会、理事会で正常に検討、議決されたとは思えません。
芸術監督選びのプロセスを曖昧にしようとする財団執行部のやり方は、芸術監督制度と芸術家を著しく軽視する行為であり、決して見過ごすことはできません。
私たちは、ここに強く抗議するとともに、今後このようなことが繰り返されないためにも、芸術監督選定の手続を明らかにすることを要求します。
2008年7月14日
井上ひさし 大笹吉雄 小田島雄志 木村光一 坂手洋二 佐藤信 沢田祐二
永井愛 蜷川幸雄 ペーター・ゲスナー 別役実 松岡和子
日本劇作家協会 日本演出者協会 国際演劇評論家協会日本センター
芸術監督選定プロセスの詳細開示を、再度求める声明
新国立劇場運営財団は7月17日、「芸術監督選定プロセスの詳細開示を求める声明」に対して「回答」を提出しましたが、私たちは、これは私たちの求める「プロセスの詳細開示」に対する回答にはなっていないと考えます。
新国立劇場運営財団は、「芸術監督選考を巡る理事会でのやり取り」を記した永井愛理事が会議の内容を公開したことを、「守秘義務」に抵触すると指摘していますが、私たちはそのようには考えません。このたびの芸術監督選定過程に於いて問題になっているのは、鵜山氏やその後任者についての「個人の資質、評価」ではなく、新国立劇場運営財団執行部の進め方、手続きの踏み方の「プロセス」の正当性です。こうした財団執行部の対応は、問題の本質をすり替えるものです。
非公開であっても、そこに、公正さを損なうおそれのある審議が行われていた可能性があるとすれば、そのことについて内部からの告発があった経緯こそを、重く受け止めるべきです。詳細開示を求めるメンバーの中に、永井理事のみならず、新国立劇場運営財団の理事、選考委員、評議員が入っていることは、このことが新国立劇場運営財団内部に留めておくべきではなく、広く社会に問いかけるべき問題であるという、私たちの判断を示しています。
そもそも、新国立劇場運営財団執行部による記者会見の内容が、多くの報道陣に違和感を与えたばかりでなく、新国立劇場運営財団の一部の理事、選考委員、評議員の認識とも大きく食い違っていたことから、このような詳細開示を求める声が上がったのです。
新国立劇場運営財団に、あらためて「プロセス」についての詳細の公開を求めるとともに、今回の回答の中で言及されている鵜山仁芸術監督にも、あらためて事実関係を証言して頂きたいと思います。
2008年7月22日
井上ひさし 大笹吉雄 小田島雄志 木村光一 坂手洋二 佐藤信 沢田祐二
島次郎 扇田昭彦 永井愛 蜷川幸雄 ペーター・ゲスナー 別役実 松岡和子
日本劇作家協会 日本演出者協会 国際演劇評論家協会日本センター
act15号目次
●巻頭言
出口逸平 怪談好み
●劇評
正木喜勝 家族と記憶-下鴨車窓『旅行者-
藤原央登 邂逅を必然化するということ-唐十郎演劇塾研究公演『動物園が消える日』-
小林壮路 『歌わせたい男たち』と文化的越境の可能性
菊池あずさ うどんがうどんであるために-劇団_光の領地『うどん屋』-
●関西ダンス時評
中西 理 山下残「It is written there」
古後奈緒子 侵犯し、融解する身体の内と外-坂本公成の『MONSTER PROJECT』-
●時評・発言
星野明彦 福岡ばかりが九州ではないのだが
棚瀬美幸「ドイツ演劇について語る夕べ」で、大いに語る
永田 靖 近現代演劇研究会のこと
編集後記
[劇評家養成講座]開設のお知らせ
[劇評家養成講座]開設のお知らせ
[参加要領]
主催;AICT(国際演劇評論家協会)日本センター
共催;(財)せたがや文化財団
開催日;2008年4月〜09年3月 ※原則として、第2か第3日曜日
会場;世田谷文化生活情報センター セミナールーム(三軒茶屋駅徒歩5分、キャロットタワー5F)
定員;20名
応募方法;下記まで、氏名、住所、電話番号、メールアドレス、参加理由(800字以上)を添えてお申し込みください。定員を超えた場合、追って連絡します。
締切;4月20日必着
資格;今後、文字媒体を中心とする批評活動に積極的に参加したいと思う者。
料金;10、000円(年間12回)
連絡先;
住所=東京都千代田区猿楽町1-4-4 晩成書房気付け[劇評家養成講座]担当
Mail;aicttheatrearts●gmail.com
*●を@に換えてください
FAX=(03)3293-8349(晩成書房気付)
電話連絡の場合、(048)885-4440(ニシドウまで)
[目的]
AICTでは、この4月より新たに「劇評家養成講座」を開設します。
舞台を見終わった後、その舞台について語り合ったり、今の演劇状況についての「談論の場」があったらいいのに、と思う方は多いのではないでしょうか。それも言い放しではなく、批評の言葉を磨き、演劇体験を「語る」ことでもっと豊かに自分の思考へ転化させたい–そんなことを目指して、この講座は開設されます。
劇評とは、演劇やダンスなど上演された舞台のみならず、それが社会や文化にもたらす波及効果、そこから発生する多様な関係、人びとの生活に与える影響など文化批評、社会批評の多岐にわたっています。その根底にあるのは、社会に向けて「発言」したいという意志ではないでしょうか。今後、そうした発言を担っていこうとする者、共に「劇評とは何か」を探究し、状況を創出していこうとする者、とくにプロの劇評家になりたいと思っている方のために開かれる場です。
われわれAICTは、これまで批評誌「シアターアーツ」を1994年に創刊し、以後、14年にわたって継続的に刊行してきました。創刊された90年代半ば当時、老舗の演劇雑誌や有力な情報誌が相次いで廃刊するなど危機的な事態が背景にありました。そこで健全なる批評を堅持するために、自力で批評の場を確保しようという志から生まれてきたのが「シアターアーツ」です。まさに「批評の危機」に対応した雑誌創刊だったわけです。しかしそれ以後、批評の状況は豊かになったでしょうか。とくに90年代以降、批評活動を始める次代の担い手がなかなか登場しないのが実状です。その理由として舞台について議論する場、劇評を発表する場が失われてしまったのではないかという結論に行き着きました。つまり他者と相互的な関係を持ちつつ意見を交わらせる場がなくなってしまったのです。そこですでに実践的に劇評を書いている者たちと、これから劇評を書きたいと考えている者たちが共同で場をつくり出そうというのが、この講座の主旨です。
講師は「シアターアーツ」の現編集部を中心に、随時いろいろな方をお招きする予定です。
[方法]
年12回を4クールに分けます。3ヵ月に1度、劇評、あるいは評論(長編)を書いてもらい、受講生や講師達と相互に読み合います。その中から優秀な作品を「シアターアーツ」に掲載します。
月1回、ゲストを招き、現在の舞台芸術が当面している課題についてトークを行ないます。(この回のみ、一般公開とする予定です)
月1回、劇評について討論します。最新の「シアターアーツ」を参考テクストにします。(受講生は「定期購読」をお願いします。)AICT会員が劇評についてのミニレクチャ
ーを行ないます。
こうした3パターンで展開していくのが、「劇評家養成講座」です。
講師;西堂行人、新野守広、高橋宏幸(「第二次シアターアーツ」第三期編集代表)
[日程]
第1回;4月26日(土)14;00〜17:00※この回のみ土曜日の昼となります。
第2回;5月11日(日)18:30〜21:00(第1回劇評執筆〕
第3回;6月15日(日)18:30〜21:00(ゲストあり)
第4回以降は、日程は未定ですが、第2か3の日曜日の夕方以降を予定しています。